柱と柱を繋ぐようにしてある横長の木材を、表と裏から交互に挟みながら板を打ち付けていく手法を「大和打ち」というのですが、この大和打ちを連続させて作った板塀のことを大和塀と呼んでいます。
ちなみに、板と板の間に竹(この場合多いのはさらし竹と呼ばれる防腐処理の施された加工した竹)を入れてつくった塀を大和塀と呼ぶ事もあります。(私も大和塀と呼んでしまっています)
今回は、この大和塀についてお話させていただきます。
まず、印象的なのは、何といっても焼いた板が何枚も何枚も使われている事です。
黒い、赤茶けた、まさに木の板を焼いて作るこの焼き板は、防腐剤の無かった頃に、防腐処理の一環として行われていたものでして、表面を焼いて炭化させるのですが、焼き過ぎてしまっては燃え尽きてしまうので(笑)その辺、焼き加減が重要になってきます。
当社ではガスバーナーや灯油バーナーなどを用いて焼いていますが、そういった道具の無かった昔は、一体どのように焼いていたんでしょうかね?恐らく焚火のようなところで炙っていたか、わらなどで火をつけて手早く表面だけ火を回していったか、なんにしても凄い技術力が無いと難しいんじゃないのかなと想像します。
一方、ガスバーナーや灯油バーナーは筒先と板との距離と筒先を動かしていくタイミングのコツを掴めば、あとはその通りに作業し続けるだけでいいので、昔の職人さんに比べたら、楽になったんじゃないかなと感じます。
素人目には燃えているんじゃないかなと不安になるかもしれませんが、燃えているんじゃなくて、焼いているのです。この違い、大事です(笑)焼けた板はデッキブラシなどでこすり、炭化した部分の粉を全てキレイに落とします。これで、焼き板の完成です。
柱を埋け込み、柱同士を連結する木材(胴縁と呼びます)でしっかり連結したら、いよいよ焼き板を打ち付けていきます。表側に1枚貼ったら、端と端が少し重なるくらいの位置関係で裏から1枚貼り、それをどんどん繰り返していきます。屋根にあたる部分をどうするかという問題がありますが、これは庭に似合うデザインと予算の都合である程度変わるので、板を大和貼りした段階で、大和塀としての仕事はほぼ、終わりになります。
焼き板とさらし竹を交互に貼っていく板塀の場合、これがなかなか根気が要ります。そして、算数の素養も要ります。
要は、片側の端から焼き板→さらし竹→焼き板→さらし竹→焼き板というように何も考えずに貼っていくと、反対側の角に来てとっても中途半端に式間が残ってしまう可能で胃が高くなってしまいます。折角上手に貼ってきても、最後の最後で変なスペースが残ってしまったのでは画竜点睛を欠き、無駄になってしまいます。
焼き板とさらし竹の感覚を何ミリとるのか?これはあらかじめ計算しておいて、その距離を胴縁に印をしておき、その通りに焼き板とさらさ竹を打ち付けて行かなければいけません。
焼き板とさらし竹の隙間の間隔は、広すぎず狭すぎず。広すぎると隙間から向こう側が見えてしまって何だか落ち着きませんし、狭すぎてはひょっとしたらちょっと太いさらし竹があったりすると打ち付けられなかったりしますので注意が必要です。
最後に、この大和塀のデザイン的な用途としては、まずは目隠しとして考えるのが妥当かなと感じます。板を焼くので黒っぽい色になりますので、明るく陽の当たる場所よりも少し暗めの日陰の方が、より雰囲気が出るかなと感じます。(もちろん、ひなたがダメとは言っていません)
板の輪郭やさらし竹など、非常にシッカリした直線ラインを持つテクスチャになりますので、強い直線に負けないような庭の構成にしないと浮いてしまいますので注意が必要だと思います。