柵と書いて「しがらみ」と読むのですが「しがらみ」というと世間のしがらみが・・・などと、あまり良い解釈で使われる事が無いですよね。
もちろん、語源はこちらのしがらみ。シッカリと打ち込んだ柱の前後を交互に縫っていくように、スラロームのように、主に竹を横に渡しながらこれまた前後のパターンを交互に積み上げながら高さを出して行く柵(さく)の事です。恐らく、このウネウネと交互に交わっている柵の様子と、人の世の社会性の複雑さを重ね合わせた比喩表現なのだと思います。
しがらみは、古くから川岸を保護する護岸や土が落ちて来るのを抑える土留めなどに使われていて、いわゆる土木工事ではよく使われていた工法でした。
しかし、工業製品化・近代化・安全面への配慮などからその活躍の場は庭のアクセントへと移っていきました。
写真では割った竹を使っていますが、別に割っていなくても、そもそも竹では無くても一向に構いません。杭の前後を交互に曲げながら納めて行かなければならないので、曲げやすい部材が適している筈です。竹は繊維が強く、経年劣化しても腐って崩れにくい利点がありますので、土留めなどに使ったら二度と交換が効きそうもないような場所ではうってつけなのかもしれません。
作り方ですが、文字にするといたって簡単。
ある程度等間隔で打込んだ柱杭に端から当てて前へ後ろへと編み込みながら下へ下へと仕込んでいきます。
こうやって書くだけなら簡単なのですけどね。実際に作業するのは、なかなか骨の折れる作業です。一人でスイスイ施工するのは、ちょっと難しいかなと感じます。
用途としては、まず本格的に機能面で使っていく方法。
コチラの写真は土肌が丸見えだけど様々制約などがあって草の吹き付けができない現場。
しがらみを数段重ねて空いた空間にはつる性植物を植栽。数年後にはズルズルとツルが伸びてきて基本的な土留めが完成、という目論見。
ここまで壮大にしなくても、例えば庭のちょっと奥まった空間で段差がある、または段差を設けたい、という時にはとても良い土留めになる筈。青竹が色褪せて黄色くなり、やがて白くなり、水でカビが繁殖して黒ずんできて、それでも繊維は失われないので土留めとしての役割はシッカリ果たしつつ、経年変化で積み重なった時間を表現できるのではないかと考えます。
ちなみに、この写真は宝林寺という寺院で施工させていただいたものです。
宝林寺サイト
https://www.oubaku.org/shosan/
また、仕切りとして使うのもいいでしょう。
その施工方法の特性から、前と後ろのテクスチャがあまり違わない、というか同じ表情をしているので、しがらみの表からも裏からも見えてしまう場所での仕切りとして使うのもいいのではないでしょうか。
こちらの写真は奥山高原さんです。ササユリの園地があり、歩道と植生地を明確に分けつつも山間地の雰囲気を損なわないようにするにはどうすればいいかというオーダーから施工した場所です。
奥山高原サイト
一般家庭でも、北側の暗めな庭で高低差が欲しい時や、斜面を利用して庭を造る時などでメリハリの利いた高低差が欲しい時など、竹の持つ特性などからしがらみを取り入れるのはアリかなと感じます。
また、少し難易度は上がると思いますが、外壁として木材を使ったしがらみが施工されているお宅も散見する事ができます。
これはこれで、竹で編んでいく事を思えば更にしっかりした加工と施工技術が必要なのでしょうが、その塀はやはり周辺のアルミフェンスなどと比べると異彩を放っており、どこのお宅も存在感溢れる外構になっていました。
社会におけるしがらみは、できる事なら簡単に済ませたい所ですが、庭に造るしがらみは、シッカリと編み込んだものにしたいですね。