玄関前付近の庭を今回は報告します。
簡易トイレが据えてあるこのエリアに、敷地の奥へと入っていける通路兼坪庭を作庭していきます。
ポイントになるのは、1年前に苦労して掘り上げた大きなイヌマキです。これを、この庭で使用することが、お施主様の要望になりますので、イヌマキのサイズにしては植え込む庭スペースが狭いのでとても難しいのですが、しっかりと納めて、なおかつ庭として自然な感じに仕上げられればと思います。
まずは職人と構想のすり合わせです。最近ではiPadなど気軽に写真にドローイングできる機械が(機械てw)あるので、私の中にある構想を共有するのがとっても楽になりました。「舩越さんにお任せする」と言われた場合は、共有するための何がしかの絵は書くのですが、緻密な図面も作りませんし、現場の状況でどんどんアレンジしていくのが通常なので、こういう現場での職人とのすり合わせは欠かせません。
さあ、いよいよ大物の植え込み開始です。
元々「門かぶり」という1本の枝が門のように通路にかぶさっている仕立てのイヌマキでしたので、この細い通路でどう使うか、かなり悩みました。何とか枝を活かしたかったのですが、物理的なサイズを無視することは魔法でも使えない限りできません。何とか家の中からは枝振りを鑑賞できる雰囲気に持って行ける場所に据えることができました。
掃き出し窓のような目立つ場所ではありませんが、窓を開けるとイヌマキの枝が見える趣向になっています。
植え込みは、極力高く植えるようにしました。なぜかというと、奥に向かっていく通路のスペースはしっかり確保しなければならず、そのためには枝ぶりが邪魔になるからなんですね。これも限られたスペースで限界ギリギリ、何とか導線を確保することができたかと思います。
奥へと向かっていく飛び石と垣根の配置です。「飛び石」とは、平らな面を持つ石を連続して据え、その上をぴょんぴょん飛ぶように歩いていく日本庭園ではポピュラーな通路になります。
足の地面に接する部分を通行人に選んでもらうのではなく、作庭する側が「ここを踏んで歩いてください」と指定するんですね。なかなかこんな考え方の通路は無いかもしれません。
もっとも、そうやって足を踏みしめる場所を指定するからには、どうやって石を配置するかはとても重要な決定事項になります。広すぎてもダメ、狭すぎてもダメ。人は右足左足と幅がありますので、真っ直ぐ石を配置しても歩きにくい。使う人のシチュエーションも考慮しつつ、配置していきます。この辺、職人の腕の見せ所なんですね。庭を設計した者の意図を汲んで、与えられた材料で最高の仕上げに着地させる。なかなか一朝一夕にできる事ではありません。造園を行う職人としてセンスがあるか?それとも庭造りはちょっと難しいかなと思われてしまうか?庭造りを学びたい若手にとっては、プレッシャーな仕事になるんじゃないかなと思います。
これで色々と難しい場面は乗り越えました。次回は、いよいよこの坪庭の仕上げに入っていきたいと思います。