大物を植えた通り庭、いよいよ仕上げ作業です。
現場から打ち合わせ要請。行ってみると、竹垣根で少しトラブル発生の模様です。
縦に立てる竹(立子たてこ)がコンクリートに乗ってしまうんだけど、しっかり結束するし、このままで大丈夫か?という相談でした。
もちろん答えはノー(笑)
良いわきゃないでしょ・・・
本来であれば杭の位置をバックさせて、このままの状態で竹垣根を作りたいところなんですが・・・実は土の中は様々な構造物のオンパレードでして、配管やコンクリート基礎など、全く杭を動かすことができない状況でした。(まあそれもあって、この状態でいいかという相談だったのですが)
本意ではありませんが、「どちらが良いか?」と言う選択肢を思い浮かべて、横に渡す竹(胴縁どうぶち)を杭の裏側に変更し、杭と胴縁の接点が目立たないよう接点に立子を立て、胴縁を後ろに回したことでできたコンクリートとの隙間に入るギリギリのサイズの竹を入れました。これで違和感は緩和されると思います。
「いやいや、コンクリートに乗せてもよかったんじゃないの?」というご意見もあるかと思いますが、これは感覚の問題ではなく明確な理由があるんですね。
完成後の写真を見ていただければ分かると思います。
竹垣根の根本、立子が土に埋まっている部分には地被植物(リュウノヒゲ)が植えてあるのがお分かりいただけると思います。
コンクリートの冷たい印象から和風の庭へと急に変化するこのエリアは、ガラッと変わってしまうこの境界線のコントラストをどう緩和させるか?がポイントになっています。
そこで、このようにリュウノヒゲという地被植物にしては比較的ボリュームのある植物を植えて緑のベルトを設けることで、コンクリートから和風庭園へ突然変化してしまうのを緩和させているんです。緩衝帯という考え方です。
ここに、剥き出しの竹がコンクリートに乗ってしまっていたら・・・せっかくの緑の緩衝帯も、その効果が半減どころかひょっとしたら効果そのものがなくなってしまうのかもしれません。
仕上げに向かう理想の前提条件が崩れたとしても(この時は地下埋設物の障害でした)今現在の状況で「お施主さまの心の安らぎ」を最大限表現するにはどうしたらいいのか?という事に心を砕いて作庭にあたるのが、施工者の誠意じゃないかなと強く感じています。
とかく、職人は手戻りを嫌うものです。せっかく作った仕事を台無しにされたくはないというのが本音です。
そこで、イヤイヤ待てと、それじゃあダメだと言える設計者がきちんといる事で、なし崩しに庭が作られていって、お客様が「こんなはずじゃ・・・」となってしまうのを防いでいるのです。