2022年05月13日
こちらは停める車が増えるということで、駐車場を借りるのではなく、駐車場増設をして庭のメンテナンス手間も減らそうというのがメインのご要望でした。
伸びてしまった庭木、石造物などを撤去し駐車スペースの確保をします。
ひとつ課題となったのは側溝をどうやって渡るか?という点です。
新築工事等では全く問題にならない部分なのでしょうが、リフォーム案件では割とある課題だったりします。
今回は、単純に側溝に蓋をかければ良いというものではなく、道路とにわと高低差があるので、これをどう解消するか?(または解消しないか?)という部分を明確に見積もりに反映させなければいけませんでした。
事実、近隣のご家庭でもなかなか力技で段差の解消を行なっていらっしゃいました。分厚い側溝蓋をドンと乗せ、コンクリートで坂を作って安定させてあります。よくみると、道路のアスファルトも若干側溝蓋に合わせて勾配になっているようです。これは後付けの今回には使えない手法ですね。
結論から言いますと、駐車場として広く奥行きスペースを確保するので、側溝付近の短い距離で無理に段差の解消をせず、徐々に高低差を解消させる緩やかな坂道にして、側溝を渡るには金属製の側溝蓋(グレーチングと言います)を掛けました。
このグレーチングは下が見て取れますし脱着も容易ですので、側溝の掃除をする際には非常に威力を発揮するのではないかと感じます。
また、駐車スペースを取ると一部、屋内が丸見えになってしまうので、塩ビ製の竹垣根を目隠しにしつつ、ちょっとした坪庭を作り、全く草木のない味気ない状態は回避させていただくことになりました。
人は、程よく植物が見えている方が心理的に安心するという研究結果もありますので、少しでも植栽を残せる場合は残す提案をしています。
そこで毎日過ごされるお客様の目線を大切にすることももちろんですが、プロだからこそ見えている未来の課題に対しても良いご提案をしたいなといつも心がけています。
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私たち舩越造園は、浜松市内で庭リフォームを主に手掛けています。
創業60年余り積み上げてきた実績・経験とノウハウを強みに、新築案件には無いそれぞれのご家庭の問題点やお困りごとなどを解決します。
お問い合わせはこちらのリンクからフォームでお願いします。
入力が面倒くさいという方は電話でのご連絡でも大丈夫です。(担当者が不在の場合もございます。ご了承ください。)
2022年04月15日
それではいよいよ仕上げの作業に入っていきます。
家屋に干渉していないけれど既存の庭と干渉している東側エリアは、その境界に大きめの石を見切りとして使いました。
天端(てんば)と呼ばれる石の一番高い部分に平らな面がある部分を使うことで、大きな石から発せられる荒々しい感じと、人為的な雰囲気と言いますか、どこか規律も感じるのでは無いでしょうか?庭は自然ではありません。自然「風」なのです。そこはピクニックで通り過ぎる非日常空間ではなく、毎日過ごす日常空間ですので、縁石の使い方も工夫が必要になってきます。
もっとも、お客様が在庫している石を極力使うというのが策定のテーマでもあるので、そこは苦心したのですが・・・
逆を振り向くと家屋に隣接した西側エリアになります。
住宅リフォームの業者さんが塩ビの垣根を取り付ける計画だったので、庭の中は圧迫感のないように極力広めに取りました。
垣根沿いに点々と庭石+下草+低木+立木というパターンをいくつか配することで、細長い庭がワンパターンにならないように考慮しました。
当初設計段階では、春夏秋冬の一年間を東側から西側に向かって純盤に花が咲いていく趣向にしたかったのですが、お施主様との意見交換で断念。まあそういうこともあります。別の案件でこういうシチュエーションがあった時は、またご提案してみようかなと感じました。
で、更に変更ありで一旦完成した庭を再構築。
実は玄関先にある小さな花の咲くサザンカをお施主様がとてもお気に入りで、ぜひもう一本欲しいというリクエストに応え、しっかりとした型のものを入れ直しました。
とはいえ、何でもホイホイお施主様の言うことを聞いているわけでは無いですよ?(笑)庭の構成上、倫理上、管理を進めていく上で、お施主様の不利になりそうな可能性があれば、やめたほうがいい旨、必ずお伝えするようにしています。
例えば、お施主様がお客様をご自宅に招いた際に、庭の構成が趣味の悪い漢字になっていたりして、恥をかいたなんて事になったら、庭屋さんの仕事としては失格ですからね。言わなければいけないことはきちんと言いますよ。
庭の拡張に伴うリフォームということで、敷地の用途や使いたい樹種、囲いの種類、既存の庭石を使用するなど、様々な条件のあった現場でしたが、むしろそういう条件がある事の方が庭リフォームでは当たり前なので、そういう時に作庭者のアイディアの引き出しの数や経験に基づいたリスクの回避とか、そういった能力を試される現場だったなと感じています。
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2022年04月08日
今回は植栽についてお話ししたいと思います。
植物で作った庭の外周壁の事を生垣(いけがき)と言います。
この植物は、遠州地方ではお馴染みのマキになります。
とはいえ、いわゆる農家の囲いに植っているイヌマキではなく、ラカンマキという品種になります。
私たちが住んでいる静岡県西部では、前出のイヌマキの生垣が非常に多くありまして、その理由は温暖でありながら冬は強烈な風が吹く当地では、その強烈な冬の風から農作物や住居などを守るために、時には5メートル以上もある高い生垣で敷地を囲うのが一般的でした。
イヌマキは、成長が早く害虫が付きにくく、メンテナンスも容易で、そういった地域の需要にマッチしていたんですね。「ほそば」というイヌマキを呼ぶ方言も存在しています。
今では、逆にその当たり前すぎた風景に田舎の野暮ったさがイメージされてしまって、新しく生垣を植栽する際に、いくら優れた機能面の説明をしても、あまり採用されることは無くなってきたのは選択肢が狭くなってしまって残念ではあります。
T様宅では、元々植っていたラカンマキという葉っぱがイヌマキに比べて小さくて細かい樹種を採用。成長はイヌマキに比べて遅めなのですが、その機能性はイヌマキに劣らず、虫がつきにくくメンテナンスが容易なところはそのままに、成長も遅いので、知らない間に成長して大変なことに!!!という事態も避けられる、とても生垣に適した樹種です。
とはいえ、人気ないんだよなぁ・・・・
こちらの写真は、家の北西角。
元々狭かった上に陽の光も当たらずで、植栽にとってもずいぶん窮屈な思いをさせていた感じでした。
手前に写っているのがアラカシ。奥にヒョロヒョロと今にも倒れそうな幹が見えるのがナンテンです。
え!?ナンテンってもっと小さいんじゃないの?
いえいえ、これは葉っぱにトゲの無い普通のナンテンでして、放っておくとグングン背丈を伸ばしていきます。
幸か不幸か、せっかく大きなナンテンに成長しているので、ここは少し遊んでみたいと思います。
屋根に突き刺さるようになっていたナンテンを強制的に陽の当たる軒の外へ誘導します。
隣のカシも、無くなってしまった生垣に変わって目隠し機能を果たせるように、剪定技術を駆使して目隠しの樹木に矯正していきます。
造園工事から2年。カシにしっかり葉が乗ってきました。
これで少しすかし剪定を行っても大丈夫でしょう。
ナンテンは相変わらずグワンと大きなカーブを描いて、異質な空間を作っています。密かに、お気に入りです(笑)
残念ながらナンテンは、根本から別の芽が育ってきたら、この大きな湾曲した幹はお役御免になるかもしれません。
それは、その時の庭の用途によって変わってくるのかもしれませんね。
用途を見越して成長の方向性を変えたり、成長した結果を活かして用途を考えたり、地域に根ざしたものを選択したり。
庭づくりは、そういった植物との長い付き合いを見据えて作るものなのだなと感じます。
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2022年03月21日
今回から新たな作庭案件のご紹介に移りたいと思います。
お施主様敷地の隣接地が売りに出されるにあたり、拡張して買い取ることになったというのが話の経緯です。
以前の状態であれば、生垣が植えてあってそれで精一杯のスペースだったのですが、今回かなり広くスペースが取れたので、子供が遊べるようにオープンスペースとしては残しつつ、庭としての鑑賞に耐えられるものをというリクエストでした。
細長くかなりの距離があります。
家の中で生活しながら見える範囲と、窓際に立って外を見たときに見える範囲、そして庭に降り立った後、その全ての場面で庭木や庭石が機能するようなものと配置を考えなければいけません。
悩みましたが、楽しい作業でした。
手始めに、既存の庭木と新たに拡張したスペースとの仕切りをどうするか問題。
幸い、お客様が庭石を建築会社様の土場にストックしてくれてあったので、その中から土留めと庭石として使えるものをピックアップし、縁石風に据え付けました。
天端も出ていますし、きれいに既存庭と新スペースとを分けることができたのではないかと思います。
この庭のポイントとなる飛石の据付です。
既存の庭石を最大限利用することが条件の一つなので、飛石に使えそうな石をピックアップしてまずは並べてみました。
小さな石を2つくっつけて一つの飛石にする技法は、割と昔からある技法なのですが、今現在ではなかなか使うことのない技法です。
飛石を担当したK君も、庭づくりの魅力を随分感じ取ったのではないかと思います。
とはいえ、なかなかあることじゃない仕事なので、先輩の指導を受けながら何とか飛石を打ったというのが実情です・・・でも良いリズムで打てたと思います。
あらかじめ作成した図面に則って、期待値をクリアできると踏んだ庭石(景石)は先に据えておきます。
樹木の根元に下草と庭石があって、それで初めて座りのいい庭になります。
樹木、低木、下草、景石。
これらのバランスの事を「勢い」と言います。
それぞれの物質が放っている力の方向性。ベクトルが複雑に行き来し、最終的に安定した状態が良い庭ということになります。
こちらはまた次回、進捗ご報告ということになります。
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2022年03月14日
いよいよ仕上げの植栽工事と砂利敷きです。
植栽には大きく2つの側面があって(庭そのものにも言える事ですが)それは絶対にどの植栽にも当てはまる事でして、1つは「見るための側面」と「使うための側面」になります。
どちらか一方に振り切ってしまうということはほとんどなく、どの植栽も多少なりとも「見る側面」や「使う側面」を有しています。「見る一辺倒」や「使うことが100%」という場合はほとんど無いと思っていただいて良いかと思います。
このリュウノヒゲは地面にボリュームを出して濃い緑を見せることで庭の築山と砂利敷きの境界線を緩衝させる役割を担っているので、そういった意味では見る側面ですが、ボリュームのある築山を急角度で表現するために雨や水やりで土が流れてしまわないための土面保護という使う側面も有しています。
他の小さな植栽も同様です。
土の流失を防ぐ側面と、シンボルツリーに対して根本を賑やかに彩ったり四季折々の花や葉っぱなどの表情を、私たち庭の鑑賞者に見せるという側面を有しています。
逆を言えば、「見る側面」にも「使う側面」にもあまりパッとしたものを感じないなぁ・・・と思ってしまう植栽があったら、それは庭の構成にとって不要である可能性もありますので、一旦よく考えてみるのも良いかと思います。
最後の仕上げ、デザイナーAのたっての希望もあり、異なる種類の砂利を敷き均して庭に変化をつける試みです。どうかなぁ・・・と伝えたのですが、たっての希望とお施主様の許可もあって、GOサインを出しました。こうしてみると、悪くないのかなと感じます。
あまり庭に出ない想定ということと、小さなお子様や大きな犬などがいない前提ですので、活動的なステージにいらっしゃるご家庭にはあまりお勧めしませんが、砂利敷きが広いなと思ったら、一考の余地はあると思います。
庭全体の写真をご紹介して、M様坪庭の改修工事は終わりとさせていただきます。
坪庭スペースは、とかく忘れられがちなエリアであり、ちょっと油断すると物置になっていたり「邪魔だなぁ」と思いながら生活していたり、住人にも庭にも不幸なことになってしまいます。
それを防ぐには、やはり植栽の力を借りるのが良いかと思います。
庭には四季の変化があります。石や下草の安心感もあります。
人は視界に入っている風景の4分の1程度が植物の緑だと心が落ち着くという研究もあります。
日々の生活の中に、ふと、季節の花が咲いていて、それを喜べる自分がいる。
坪庭は、日々の忙しさに追われる自分をちょっと振り返る良い機会をくれると感じています。
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