2021年10月08日
今回は少し趣向を凝らした紅葉の並木道の策定風景をお届けします。
パースでお客様にお伝えしたイメージです。
こんなに紅葉しませんが、あくまで脳内イメージということでご勘弁下さい(笑)
木曽石というゴツゴツ感がありながらも丸みを帯びた自然石の石畳の左右に紅葉の並木があって、歩くのが楽しくなる趣向です。
まずはモミジを選んでおきます。
並木に似合うような株立ちの数が多過ぎない木を選んでいきます。
先に選んでおくと価格も掴めるのでお客様にとってもメリットです。
そして庭造りも進んだところで石畳の作庭。
まずはスタートとゴールの石を据えておきます。
石畳の輪郭も同時に掴んでおきます。
配置を意識しつつ石を並べていきます。
輪郭から決めていくのが一応セオリーと言われています。
大小様々な石を入れる際は大きい石から据えていくのですが、サイズ感が同じものを使う場合は、この手順の方が結果的に良い石畳(延べ段と言いますが)になります。
大方据え終わりました。あとは打目詰めを行えば完成ですね。
工事を行うにあたり、在庫している石だけでは心許ないかなと感じたので「新しく材料を仕入れようか?」と担当職人に聞いたところ「いえ、大丈夫です。在庫でできます。」との心強い言葉。経営者としてありがたい言葉でした...
現場のバランスを見ながらモミジを植えていきます。
植えてすぐは根っこが不安定で枯れやすいので、竹で支柱をします。
並木道の支柱はなかなか邪魔になって難しいものですが、こうやって支柱をしてあると、その支柱すらも一つの景色になりますね。
良いですねぇ。
実際、お客様もお気に入りのエリアになったとおっしゃって頂けて、作庭者冥利に尽きます。
下草もあしらっていきます。これでほぼ完成です。
素朴で良い感じの並木道になりました。
奇をてらった庭はあまり好きではありません。毎日目に入ってくる庭は素朴でも変化に富む庭であってほしいです。
モミジは春の力強い新緑、夏の旺盛な生命力、秋から冬にかけての紅葉と落葉。四季を感じることのできる素晴らしい庭木です。
こんなにたくさんのモミジを植えるお庭は稀だとおもいますが、とても使い勝手も良く枯れにくく、四季を感じられるお得な庭木なので、ぜひお庭に取り入れてみてはいかがでしょうか?
素朴でかっこいいお庭の提案、いたしますよ?(笑)
2021年09月23日
今回は庭門や塀について書きたいと思います。
造園工は多能工と言われますが(多能工なのは庭屋だけじゃないぞ!って?まあそうおっしゃらず・・・)様々なスキルを駆使して庭づくりを行っています。
植物の剪定や病害虫、掘ったり植えたり、石を積んだり並べたり、時に芸術的に。
竹を切ったり割ったり結んだり、大工みたいなことだってやったりします。
庭門と塀は木工がメインの仕事です。
雨の日なんかを利用して、新しいモノを試してみたりします。
今回、お庭で採用した塀の試作段階です。まあ色々と見えちゃってますが、試作という事でご勘弁を。
現場の石工事が概ね終わったら、塀の位置を決めていきます。
ここで図面通りに狂いなく・・・というのは設計者のエゴです。
現場に上手く馴染むように現地でしっかり位置出しを行って決めなければいけません。
コンベックス(メジャーですね)がいつも大活躍します!
位置が決まったら柱を埋けて、胴縁も渡します。
これでおおよそ塀の良し悪しが分かりますね。引き返すなら今ですが今回は上手く決まりました。
板を貼っていきます。
ここまでくるとTHE塀!という感じも出てきますね。
良いテクスチャになっていると思います。
塀の屋根部分を製作して完成です。
今回は瓦を使ってみました。
足もとの東栄石積みといぶし銀の瓦が良い感じになったのではないかと思います。
植栽をあしらって、塀の完成。
塀の面を見せたかったので、割と密にならないドウダンツツジをあしらいました。
ドウダンツツジは特に水を欲しがる植物ですので、水遣りのタイミング目安にも使っていただけます。
ドウダンツツジの根元にはフウチソウ。
ドウダンは枝が上がって足もとが丸見えになってしまいがちなので、フウチソウでボリュームを付けたいと思います。
冬は枯れますのでドウダンに寒肥をやりやすい仕様になっています(笑)
2021年08月23日
今回は唯一移植をせずにその場に残したソテツ周りについてお話ししたいと思います。
ソテツの移植はなかなか作業的に手間が掛かるので、現状の状態で庭に活かしていこうという試みです。とりあえず、第1回目の報告ブログの際にもソテツのみ固定した状態のほぼ白紙から庭のデザインを起こしたので、ひょっとしたらソテツがデザインの軸になったのかもしれません。
あらかた造成も終わり、ソテツ周りの詳細について決めていかなければいけない時が来ました。
既存の庭石が多くありますので、これを利用して行きたいと思います。
もっとも、ソテツを主役にして庭のシンボルにするというよりも、庭の一部として溶け込ませるような使い方をしたいと思っているので、できるだけ周囲に色々配置していく方針です。
今後の方針について職人と現場で打ち合わせ。ここでも大活躍のiPadです。
築山のように盛り上がった頂上から突き出るような形でソテツが植えられていますから、その勢いというか違和感を軽減させるために根元に石組を施工します。
足もとに硬質な石が複数据えられていることで、ソテツの上へ広がる違和感を重量感でつなぎとめるようイメージを伝えました。
石を据え終わったところです。石も含めてひとつの「景」を形成したので、ソテツの違和感を緩和できていると思います。ただ、まっすぐ伸びていないので、その違和感だけは強烈に残ってしまいますが、これはどうしようもないですね。他の植栽や添景物などとセットで緩和させたいと思います。
行の延べ段という石畳と盛り上がっているソテツの足元の土の間の距離が少ないのでピンコロと呼ばれる御影石の角石を土留めに据えました。
これは現場からのアイディアです。いいですね。お任せ造園は、このように施工しながらより良いものを取り入れていけるのでとても好きな施工方法です。(ただ、私と職人との相性もあるので、相性の悪い職人や打っても響かない職人とは絶対やらないですけど・・・)
ちなみに奥に写っている職人は石畳の水平を感じ取っているのであって、決して腕立て伏せをしているのではありませんので、あしからず。(腕立てしている可能性もありますが)
庭門や灯篭なども入って随分にぎやかになってきました。
恐らく、この写真を見た時に、最初にソテツに目が行った方はほとんど居られないかと思います。馴染むとは、つまりそういう事だと私は感じています。
さあこれで完成です。
盛り上がっている植え込み位置、斜めになっている樹形、なかなか難儀しましたが庭の「景」として馴染ませることができたのではないかと思います。
今あるものを最大限生かした庭造りは、多彩な業務アイディアの引き出しがある創業60年の舩越造園にお任せください。
2021年08月06日
いよいよ庭造りに入っていきます。
今回の現場では,1番最初の段階で最大の難関がやってきました。
写真ではうまく伝わらないかも知れませんが、メチャメチャ大きい庭石です・・・お客様の既存庭に鎮座していた時から独特の存在感を放っていたわけですが、いよいよ掘り出してみると・・・現場に入れられる当社のバックホウで何とか動かして所定の位置に置けたわけですが、それ以上の移動はおろか微調整もままならない程になってしまいました。砕いて処分することも頭をよぎりましたが、何とか使って欲しいとのご要望を受けましたので、もうこれは仕方ないですね。今、この場でこの感じで何とか庭に活かして行くしかありません。
回遊式の庭へ入っていく第一歩の大きな飛び石として機能させる事にしました。
周辺を石積みにして、既存のソテツに高さで違和感が少ないように何とか庭の敷地を上げます。
途中、大雨が降って庭石が水没するというイベントが発生!
しかし造成途中だったので冷静に雨水処理方法を確立して完璧にクリアしました。
概ねできてきました。もうあとは植栽の力を使っていい感じの庭に仕立てていくだけです。
こうなってくればもう完成。
庭へ誘う第一歩の石としての役割を持たせることができました。石の材質も周辺の石とは異なっている石なのですが青みがかった石は、庭の手前にある青砕石が敷き詰められたオープンスペースからのつながりから見れば非常に良くなったのではないでしょうか?
日本最古の造園マニュアルと言われている「作庭記」にも「デカくて動かない石があったらそのまま庭に取り込んで使う方法がないか考えろ」という主旨の記述があります。
今回、お施主様の要望に応える形で、何とかこのデカい庭石に新しい庭での役割を持たせてあげられたのかなと感じています。
立てて埋け込まれ景石として人に見られる役割から、庭へ入っていくその導入部分である第一歩を力強くサポートする役割へ。用途は全く違えど、庭の重要部分を担い続けてくれると感じています。
2021年07月30日
新たな造園のご依頼をいただきました。
久しぶりに庭の中を歩いて鑑賞できるタイプの造園依頼になります。
今現在も色々と植栽されていますが、今ひとつ気に入らないご様子でして、使えるものは使いつつ、四季折々の変化を楽しめて草花の栽培も楽しめる、そして散策して楽しい庭をご所望でした。
庭の一角にあるソテツの木がとても印象的で、これは移植するには大ごとだし、撤去してしまうには忍びないと言うことで、ソテツをこのまま活かしつつご要望を取り入れる庭の構想を練ることとなりました。
今回は、私が庭のデザインをしていく過程を恥ずかしげもなく公開してみようと思います。
まずは敷地の図面を起こします。
普段は建物に隣接している場合が多かったり、動かしてはいけないものもあったりしますので、もっと具体的に形がある図面からスタートするのですが、今回は敷地の形、大きさ、そしてソテツの位置。これだけが条件なので、なかなか発想するにも骨が折れることになりそうです(笑)
で、第2段階がこちらになります。
「なめてんのか」とお叱りを受けそうですが・・・本当に何かを端折っているわけではなく、最初の図面に鉛筆による手書きでガーッと庭を描いていきます。描き始めれば30分くらいなのですが、鉛筆が動き始めるまでに3日くらい掛かっています。お庭のことを薄っすら頭の片隅に置いた状態で普通に日常生活を送り、何かを熟成させます。何が熟成しているのかはわかりません(笑)
全体像が薄っすら浮かび上がってきてから明確な全体像がくることもあれば、とある一角が具体的に浮かんできて、そこから全体に派生することもあります。
色々とあるのでしょうが、私はこのどちらかになります。
手書きで何となく書いたものは実際のサイズと乖離している場合があります。
例えば飛び石の大きさやピッチ、庭門のサイズ感などはエイヤーと書いているので実際はもっと大きかったり逆に小さかったりします。
ですから、まずが簡易的にCADで図面を引いてみます。サイズはどうなのかな?飛び石の数はどのくらいかな?という感じでリアルなサイズを図に落とし込んでいきます。
ここである程度樹種なども決まるので、どの庭木がどのくらい必要かとか、こんな石がこれくらい必要だなとか、見積の材料になるネタが浮かび上がってきますので、それはそれで見積作業をスタートさせます。
最後に、パースを描くため&お客様に見せるための平面図を完成させていきます。
ここまでくるとかなり具体的に工法も定まっていますので、見積もりも具体的なものが出来上がってきます。
ご予算と相談したり、微調整を重ねたり、個人的にはあまり楽しくない作業に突入します・・・
パース担当者からキレイな図面が上がってきました。庭の中を実際に歩くイメージを少しでも具体的に持っていただくために、今回はアイソメという平面っぽさもありながら立体図っぽさもある図面もお付けしました。
さあ、GOサインをいただいたので、作庭に入っていきます。細かい修正のご許可はいただいているので、予算の枠組みを意識しながら実際の作庭に合わせてより良い庭づくりをしていきたいと思います。